日本社会は、医療とAIの関係を次のステージに押し上げざるを得ない局面に立っています。
ここで問いたいのは「AIカルテ」や「診断補助AI」が技術的に可能かどうかではなく、IT企業が医療産業という巨大市場でどうポジションを築くべきかということです。
まだ医療領域に参画していないIT企業は、「次なるフロンティア」である、医療AI/DX市場をどう見るべきでしょうか?
日本の高齢化率はすでに 30%超。2060年には40%に達すると予測されています。
そして高齢者が使う医科診療医療費は全体の 62.8%。つまり医療費の大部分が高齢者の慢性疾患に費やされているのです。
しかも高齢患者は、糖尿病+心疾患+関節症など複数の疾患を抱えるのが当たり前。単一臓器だけを診るのでは不十分で、総合的な判断が不可欠になっています。これはビジネス的に言えば「市場の痛点」であり、新規参入企業が付加価値を提供できる領域です。
日本の医師の多くは臓器別の専門医です。
つまり、本来プライマリケアを担うジェネラルドクターが極端に少ない。しかも医師自体の高齢化も進んでおり、開業医の世代交代も遅れているのです。
AI診断補助は、現在の日本国内に数多く存在する、複数の質問に答えた結果、”〇〇病の可能性があります。呼吸器内科を受診しましょう。”のような「占い」に近い問診システムではなく、医師の臨床判断を拡張するツールとして設計されています。
これは単なる技術支援ではなく、**人材不足を補いながら医療の質を一定水準に保つ“産業的役割”**を果たします。
米国ではすでに「研究」から「運用」へ進んでいるプロジェクトがあります。代表的な企業と機能を簡単に整理しましょう。
当然ですが、共通するのは「AIが診断を下す」のではなく、ガイドラインに基づき候補を示し、医師の判断をサポートする点です。医師は、あらゆる診療科目・疾患の治療ガイドラインを頭に入れることなどできませんが、AIにはそれができる。一方で、AIは触診・視診など自分自身でできることがないため、プロンプトや、使い手(医師)のコミュニケーションに課題があれば、AIは正しい診断ができない。各国の医療法・医師法などの法令、何よりも、「あくまで責任主体は医師」である必要があります。
課題は、責任の所在や保険償還モデル、データ標準化。つまり、テクノロジーよりも制度と市場の受け皿が鍵になっています。
ここからがマーケターにとって重要な視点です。日本ではまだ、米国型の実装レベルAI診断補助はほぼ存在していません。市場は未成熟、だからこそ参入余地が大きいのです。
AI診断補助やAIカルテは、技術的にはすでに「実装できる」段階にあります。残るハードルは、医療制度、データ連携、そして市場の信頼性。
マーケティング担当者に必要なのは「どの層を最初に攻略するか」という戦略視点です。たとえば、
こうした現場に的を絞れば、社会課題解決とビジネス拡大が両立する事業モデルを構築できます。
医療は巨大で複雑な産業ですが、日本においては間違いなくAI×医療DXが次のフロンティア。いまこそ、IT企業の戦略人材・マーケティング人材がその可能性を見極めるタイミングです。